Japan and Kazakh to Facilitate Entry into Force of Nuclear Test-Ban Treaty - Japanese

日本・カザフ両政府が核実験禁止条約発効促進へ

【国連IDN=カニャ・ダルメイダ】

ニューヨークの国連本部で開催される第9回包括的核実験禁止条約(CTBT)発効促進会議を前にして、CTBTの発効に向けてその支持を必要とする8か国(中国、朝鮮民主主義人民共和国、エジプト、インド、イラン、イスラエル、パキスタン、米国)への圧力が強まっている。

ジュネーブ軍縮会議で交渉され1996年9月10日に国連総会で採択されたCTBTは、署名国183、批准国164を誇るが、44のいわゆる発効要件国(条約の「附属書Ⅱ」に掲げられている条約交渉当時に核施設を保有していた国々)のうち8か国が署名・批准を拒んでいるために、未だに発効していない。

核実験に対する包括的な禁止は、世界的な核軍縮・不拡散体制を構築するための重要な要素であり、越えなければならない最後の障害であるとみられている。

一般的に「第14条会議」と称されるCTBT発効促進会合は、核実験を禁止する法的に拘束力のある規範を定立することを目指して、これら8つの核兵器国をターゲットとすることになる。

8月26日から28日に広島で開催された第25回国連軍縮会議に参加した際にIDNの取材に応じたカザフスタンのイェルツァン・アシバエフ外務副大臣は、9月29日の第9回CTBT発効促進会議で日本とともに議長国を務めるカザフスタンにとって、CTBTへの支持は「当然のスタンス」であると語った。

カザフスタン北東部にある1万8000平方キロのセミパラチンスク実験場は、旧ソ連の核兵器開発事業の中で核実験を行う主要な場所であった。1949年から1989年の間に同地で456回の核実験が行われ、ガンの発生率増大や放射線被爆に起因する疾患等、推定20万人に健康被害を及ぼしたとみられている。

22万人もの死をもたらした広島・長崎への原爆投下から70年を迎える今年、日本が核実験防止のための外交攻勢を主導しているのは当然のことだ。

外務省の相川一俊軍縮不拡散・科学部長は、IDNの取材に対して、「この会議では取り組むべき『大きな課題』がある」としたうえで、「8つの(未署名・未批准)国の代表が参加して、会議を成功に導いてくれることを望んでいる」と語った。

1945年から、CTBTが採択された1996年までの50年間で、米国は1000回以上、ソ連は700回以上の核実験を行った。同じ時期にフランスは200回、英国及び中国はそれぞれ約45回の実験を行っている。

条約の遵守状況をモニターする機関である包括的核実験禁止条約機関準備委員会(CTBTO、ウィーン)によれば、1996年以来核実験を行ったのは3か国しかない。インドとパキスタン(1998年)、そして北朝鮮(2006、2009、2013年)である。

合計すると、第二次世界大戦終結以来、約2050回の核実験が、世界中の60か所以上で行われた。CTBTOによると、これらの実験場は、(米国・英国・フランスの実験場となった)熱帯の南太平洋の環礁から、長らくソ連の核実験場として使われ、「北極海の氷に覆われた辺境の群島」と呼ばれるノヴァヤゼムリャまで、「驚くほどに対照的な場所」であるという。

CTBTOは、約300の地震波、水中音響、微気圧変動、放射性降下物探知局からなる世界的な監視ネットワークによって、大気圏であれ、地下であれ、水中であれ、秘密の核実験を国家が行うことを困難にしている。

しかし、主要な核保有[能力を持つ]8か国の署名なくしては、条約は無力だ。仮に実験が探知されたとしても、制裁などの懲罰的な措置を違反国に課すことができない。

8月の広島における国連軍縮会議の際にIDNの取材に応じた、元国連事務次長(軍縮問題担当)のジャヤンタ・ダナパラ氏は、核実験に関する現在支配的な政治的現実の「脆さ」について懸念を表明した。

「北朝鮮が核実験を行うかもしれないし、ウィリアム・ペリー元米国防長官によれば、すでにCTBTに署名・批准したロシアの科学者らが、政治指導者に対して核実験の再開を求めて圧力をかけているとのことです。もしこれが本当なら、CTBTがある意味で危機に立たされているといえるでしょう。」と、「科学・世界問題に関するパグウォッシュ会議」の会長も務めるダナパラ氏は語った。

ダナパラ氏はまた、「国連安保理は国際の平和と安全の管理人ですから、核実験停止モラトリアムの継続は平和と安全の根本的な要素だとする全会一致の決議は、CTBTの正統性を下支えすることになるでしょう。」と語った。

実際、国連の潘基文事務総長は、先の8か国に対して、条約を批准するよう個人的に呼び掛けている。

潘事務総長は、「核実験に反対する国際デー」記念会合(9月10日)で行った演説の中で、「私は、核実験の被害者と面談し、核実験が社会や環境、経済に及ぼした永続的な被害をこの目で見てきました。…地下水の汚染、がん、白血病、放射性降下物汚染された水、ガン、奇形児、放射性降下物の影響など、核実験による環境、健康、そして経済への打撃から二度と立ち直れなかった人々も多くいます。」と語った。

潘事務総長はまた、多くの核保有国によって核実験のモラトリアムが自発的に実行されていることを歓迎しつつも次のように語った。「しかし、それが法的拘束力を有する条約の代わりとはなりえません。なぜなら、それは北朝鮮が3度にわたって核実験を実施した事実が物語っています。」「CTBTが交渉されてからもう20年が経過しました。今こそ条約を発効させる時です。」

天然資源防護評議会」によると、1945年から1980年の間に実施された核兵器は合計510メガトンにもなるという。そのうち、大気圏内核実験だけでも428メガトンに及び、これは広島型原爆2万9000発分に相当する

それぞれの実験によって放出される放射性物質の量は、爆発の大きさや規模、タイプにもよるが、多くの科学的研究を通じて、深刻な大気・水質汚染、生態系へのダメージ、怪我や内部組織・皮ふ・眼球・細胞まで含めた人体への被害など、健康や環境への負の影響があることが明らかになっている。

放射性物質から発せられる様々な粒子状物質や線の総称である「電離放射線」は、発がん作用をもっていることが科学的に証明されている。また、放射線被ばくは、白血病や甲状腺がん、肺がん、乳がんなどを引き起こすことが知られている。

CTBTOのウェブサイトにある核実験の影響に関するページは、「核兵器複合体の健康影響に関するアルジュン・マヒジャニ氏の査定など、様々な研究や評価によると、5つの核兵器国による大気圏内核実験による世界的な放射線被ばくによるガン死者は、数十万人にも及ぶと推定されている。」と述べている。

さらに、CTBTOは、「核戦争防止国際医師会議(IPPNW)による1991年の研究では、2000年までに人間が受けることになる、大気圏内核実験に起因する放射能および放射性物質は、43万人のガン死者を生むことになると推定した。そのうちの一部は、研究結果が公表された段階ですでに起こっている。」と述べている。

「この研究は、およそ240万人が大気圏内実験の結果としてガンによって死亡する可能性があると述べている。」

これらの暗い現実を考えれば、CTBTの発効は火急の課題である。発効要件国による条約批准は「可能性」の問題ではなく、それが「いつ」なのかが問題だということで大方の意見は一致しているのだが、専門家にとっても、その「いつ」というのが正確にいつになるのかは、判断が難しい。

CTBTがいつ法的な現実になるのかというIDNの問いに対して、国連軍縮問題元高等代表で、2005年NPT運用検討会議の議長を務めたセルジオ・ケイロス・ドゥアルテ大使はこう答えた。「これはかつて『6万ドルクイズ』と呼ばれたものです。いまやこれが『6000万ドルクイズ』になり、まもなく『600億ドルクイズ』になるでしょう。しかし、いまだに正答はないのです。」「これまでの世界状況が問題です。つまり強国がその力と特権を維持しようとしているのです。」

アシバエフ外務副大臣は、世界の核兵器国が現在1万6000発の核を保有していると推定している。これらは、「地球を何度でも破壊できる」能力がある。

軍備管理協会のデータによると、ロシアと米国で世界の核弾頭の9割を占め、それぞれ、7700発、7100発を保有している。第3位のフランスはずっと離れて300発。また、中国は250発の核を誇り、英国は225発を保有している。

パキスタンとインドはそれぞれ110発、100発を保有し、イスラエルは80発、北朝鮮は10発である。ただし専門家らは、これらの数値を検証することは難しいと考えている。

軍備管理協会によれば、およそ1万発の核弾頭が軍の管理下にあり、残りの6000発が解体待ちの状態である。(9.10.2015)  IPS Japan/ IDN InDepth News