Nuclear States Face Barrage of Criticism in Vienna - Japanese

核保有国、ウィーンで批判の嵐にさらされる

【ウィーンIPS=ジャムシェッド・バルーア】

「無神経でタイミングが悪く、不適切で外交的技量に欠ける発言」で、核兵器の非人道性に関する国際会議への「参加決定によって米国がせっかく得ていた参加者からの善意の大部分を思わず台無した米国代表」に向かって、ある市民社会組織の代表が「賛辞」を述べると、会場に失笑がこだました。

発言したのはリチャード・レナン氏。ジュネーブを拠点にした核軍縮イニシアチブ(通称「野火」)の「主席煽動官」を自称している人物だ。2013年のオスロ会議(ノルウェー)、今年初めのナヤリット会議(メキシコ)に続いて12月8日と9日にウィーン(オーストリア)で開催された通算3回目となる国際会議の最終セッションでの席上でのことである。

以前の2回の会議とは異なり、フランス、ロシア、中国と並んで「核クラブ」の一員である米国と英国が、今回の会議に初めて公式参加した。

しかし、米国代表による外交的修辞は、広島・長崎の被爆者や、オーストラリアカザフスタン(旧ソ連時代のセミパラチンスク)、マーシャル諸島での核実験の被害者の証言が会場の参加者の心を大きく揺さぶったのとは対照的に、まったく的外れのものだった。被爆者らは、核兵器の悲惨な影響について力強い証言をし、その内容は他のデータや研究結果を発表するプレゼンテーションを補完する形となった。

国のアダム・シャインマン大統領特別代表(核不拡散問題担当)は、「数十年に及ぶ我が国の取り組みの基礎にあるのは、核兵器の使用が人間に及ぼす影響に関する明確な理解です。」と断言した。

しかしこうした主張は、大多数の会議参加者に何ら好印象を与えず、来年開催予定の核不拡散条約(NPT)運用検討会議で何らかの成果がありうるとの希望ももたらさなかった。

会場の落胆は、米国の軍備管理協会エネルギー環境研究所米国科学者連盟核情報プロジェクト社会的責任を求める医師の会憂慮する科学者同盟共同声明で、「2010年NPT運用検討会議の成功から5年近くが経過しているにも関わらず、全会一致の行動計画、とりわけ相互に関連を持った22項目の軍縮措置の実施状況はきわめて残念なものだ」と指摘していることから、なおさらのことであった。

さらに共同声明は、「新戦略兵器削減条約(新START)が2011年に発効して以来、ロシアと米国は、合理的な抑止に必要なレベルを遥かに上回る膨大な核備蓄の削減交渉を開始できていない。」と指摘している。

また2015年は広島・長崎への原爆投下から70年にあたる。広島平和大使であり1945年8月6日の核爆発を生き延びた節子サーロー氏の熱のこもった語りからも明らかなように、被爆者やその家族は依然として原爆投下の帰結を肌で感じている。

「いかなる核兵器の使用も、破滅的で長期に亘る、そして許容できない結果をもたらします。各国の政府がこうした証拠と被害者の証言を聞いたら、行動をしないではいられないはずです。」「唯一の解決策は、核兵器の禁止と廃絶。そして、それを今すぐ始めなければなりません。」と日本のNGO「ピースボート」の川崎哲共同代表は語った。

米国のシャインマン特別代表は一般討論で発表した声明の中で、こうした不安を打ち消そうとして、「米国は核兵器使用の重大な帰結を十分に理解しており、核使用を避けることに最大の優先順位を置いています。米国は、核兵器なき世界の平和と安全保障を追求するここにおられる全ての人々と、共にあります。」と指摘したうえで、「米国は、核不拡散条約体制も含め、さまざまな道具立てや条約、協定の助けを受けながら、そうした世界の条件を創りだすために努力してきたし、これからもそうするつもりである。」と語った。

米国政府の主張の信憑性にかかわらず、シャインマン特別代表のドライでむしろ紋切り型の発言は、158の参加国中44か国の代表が「核兵器が存在し続けるかぎり、意図的、計算違い或いは狂気、技術的・人的ミスによる核使用のリスクが現実にありうる」と情熱的に訴えかけた姿とは対照的なものであった。

ウィーン会議の場で核兵器禁止条約への賛同を示した国は次の通り。オーストリア、バングラデシュ、ブラジル、ブルンジ、チャド、コロンビア、コンゴ、コスタリカ、キューバ、エクアドル、エジプト、エルサルバドル、ガーナ、グアテマラ、ギニアビサウ、ローマ教皇庁、インドネシア、ジャマイカ、ヨルダン、ケニア、リビア、マラウィ、マレーシア、マリ、メキシコ、モンゴル、ニカラグア、フィリピン、カタール、セントビンセントおよびグレナディーン諸島、サモア、セネガル、南アフリカ、スイス、タイ、東ティモール、トーゴ、トリニダード・トバゴ、ウガンダ、ウルグアイ、ベネズエラ、イエメン、ザンビア、ジンバブエ。

フランシスコ法王は、世界的な世論を反映して、会議に寄せたメッセージの中で、「核兵器は完全に禁止されるべき」と訴えた。

国連の潘基文事務総長は、アンゲラ・ケイン国連軍縮担当上級代表が代読したメッセージのなかで、オスロ、ナヤリット、ウィーンでの取り組みは「人道的な配慮を核軍縮問題の全面に押し出し、市民社会と各国政府の双方に活性を与えるとともに、私たちに対し、核兵器が使用されれば恐ろしい結果が待っていることを否応なしに認識させました。」と語った。

また核軍縮に熱心に取り組んでいる人物として知られている潘事務総長は、核兵器を正当化する理由に疑問を呈し、「核兵器を世界的な緊張の高まりへの合理的な対応と考えたり、国家威信の象徴とみなしたりする人々に対峙するうえで、核兵器の恐るべき帰結を考慮に入れることが不可欠です。」と語った。

さらに潘事務総長は、「貧困や気候変動、過激主義、情勢を不安定化させる通常兵器の蓄積が、提起する課題に対応できないでいるなかで、私たちを相互に破壊する手段の近代化に資金を費やすことの愚かさ」を批判した。

潘事務総長は、「私たちが核の時代に突入してから70年目を迎えようとしています。」と指摘したうえで、「核兵器の保有は国際紛争の発生を防ぐどころか、紛争の危険度を高めます。」と語った。

潘事務総長はさらに、『軍を警戒態勢に置いても安全は得られす、逆に事故の可能性が高まり核抑止の原則を標榜しても、核の拡散に対応することは出来ず、兵器を保有したいという欲求が高まるだけです。』と語った。

「核兵器保有国が増えれば、世界の安定は確保されるどころか、根底から損なわれてしまいます。」と潘事務総長は語ったが、この見解は、ウィーン会議に参加していた信仰に基づく諸団体の間でも広く共有されていた。(12.10.2014) IPS Japan