Mideast Nuclear Weapons-Free Zone Remains in Limbo - Japanese

依然不透明な中東非核地帯化への道

【国連IPS=タリフ・ディーン】

紛争で引き裂かれた中東地域に非核兵器地帯(NWFZ)を創設する提案は、4年にもわたって交渉入りが引き延ばされたあげく、依然として不安定な状態に置かれている-もしかすると、事実上死に体になっているかもしれない。

しかし、核軍縮の強力な主唱者である国連の潘基文事務総長は、この提案を再生する決意をみなぎらせている。

潘事務総長は、第69回国連総会(9月16日に開会)での年次報告書の中で、「私は、中東非核兵器・非大量破壊兵器地帯創設に関する国際会議を招集するという約束を果たすために、引き続き全力を尽くすつもりです。」と語った。

潘事務総長は、「そうした(非核兵器)地帯を創設することは、核不拡散条約(NPT)の存在意義を保つためにも、『最も重要』なことです。なぜなら非核兵器地帯は、核軍縮・不拡散体制の強化に、そして、地域的・国際的安全保障の向上に資するからです。」と語った。

既存の非核兵器地帯は、中央アジア、アフリカ、モンゴル、東南アジア、南太平洋、ラテンアメリカ及びカリブ海地域、南極、宇宙空間に設定されており、いずれも法的拘束力を伴う国際条約によって規定されている。

しかし軍事的に問題を抱えた中東地域では、イラク、シリア、リビア、イエメン、パレスチナが不安定化するなど政治危機が地域全体に広がっているなか、非核兵器地帯を創設するという長年に及ぶ提案も、今後一層厳しい局面を迎えることになるかもしれない。

2010年のNPT運用検討会議で義務づけられた「中東非核兵器地帯創設に関する国際会議(中東会議)」を開催するという提案は、来年4月の開催が予定されている2015年NPT運用検討会議までに実行されないかもしれない。

反核運動家らによれば、その場合、NPT運用検討会議そのものが危機に陥るかもしれないという。

フィンランド政府は、「中東会議」の実現に向けて積極的な役割を担ってきたが、会議開催に対する米国政府による暗黙の反対に遭い、事態は行き詰っている。米国は、中東における最大の同盟国であるイスラエルの非核化に会議全体の関心が向かってしまうのは好ましくないとの考えを表明している。

エルサレムに拠点を置く『パレスチナ・イスラエル・ジャーナル』の共同編集人で中東の核開発情勢に詳しいヒレル・シェンカー氏は、IPSの取材に対して、「最近のガザ・イスラエル戦争は、一見したところ、「中東会議」の開催をさらに困難にしたように見えますが、実際のところは、(会議開催に向けて)前進できる新たな機会が開かれたと言えます。」と指摘した。

エジプト政府は、主要な仲介者として、イスラエル・ハマス間の停戦合意を成立させるうえで重要な役割を果たした。また最初の停戦合意で取り扱われなかった問題を扱うその後の交渉についても、引き続き中心点な役割を担っている。

シェンカー氏によると、悲劇的な暴力の応酬が続く最近の中東情勢の中で、エジプト、イスラエル、ヨルダン、サウジアラビア、湾岸諸国、そしてマフムード・アッバス大統領率いるパレスチナ自治政府の間に、原理主義組織ハマスに対する共通の戦略的利害が形成されつつあるという。現在ハマスは、イラクやシリアで活発に活動している(同じくスンニ派)原理主義勢力「イスラム国」との連携を模索しているとみられている。

シェンカー氏は「形成されつつあるこうした(対ハマス)非公式連合から、今後新たな中東地域の安全保障のあり方を模索しようとする機運が生まれる可能性があります。ただし、そうした展開が実現するには、停戦を超えた様々な取り組みと、イスラエル・パレスチナ紛争全体を解決するための真剣な交渉が再開される必要があります。」と語った。

ニュージーランド全国軍縮諮問委員会のボブ・リグ前議長は、IPSの取材に対して、「これまでに、「中東会議」を招集しようとする多くの試みがありました。しかし、中東非核兵器地帯の創設は、国際管理の下でイスラエルの核戦力を破壊することを前提とすることになるため、ことごとく実現に至りませんでした。」と語った。

「核兵器能力の取得は、イスラエルのベン・グリオン初代首相の主要課題であり、イスラエル政府はそれ以降一貫して核兵器能力の保持を、安全保障政策の中心に位置付けてきました。」と、反核活動家で化学兵器禁止機関(OPCW)の元主任編集者でもあるリグ氏は語った。

さらにリグ氏は、「イスラエル政府は、いかなる文脈においても、核兵器の保有を公式に認めることに消極的ですが、実際に『中東会議』が開かれることになったとしても、意味のある議論を行える根拠がありません。」と指摘したうえで、「イスラエルの核武装化を支援した西側諸国は、イスラエルの核兵器について決して言及しないことで沈黙の陰謀に加担しており、問題を複雑化しているのです。」と語った。

例えば、米国のジミー・カーター元大統領は、イスラエルが核兵器を保有していると発言したことで、米国の政治家やメディアからの厳しい非難に晒された。

アボリション2000」調整委員会の委員で「核時代平和財団」ニューヨーク支部のアリス・スレイター支部長は、IPSの取材に対して、「(国際社会が)『中東会議』を開催するとの公約を果たそうとする努力がないなかでは、NPTの将来的な実効性を危惧せざるをえないと警鐘を鳴らした潘基文国連事務総長の先週の発言は、極めて的を射たものだった。」と語った。

「1970年に発効したNPTは、核軍備競争の早期の停止及び核軍備の縮小に関する効果的な措置について、さらには厳重かつ効果的な国際管理の下における全面的かつ完全な軍備縮小に関する条約について、誠実に交渉を行うことを約束すると定めています。」とスレイター氏は指摘した。

これまでに3カ国を除き、5大核兵器国(英国、ロシア、米国、フランス、中国)を含む世界のすべての国がNPTに署名している。

インドとパキスタン、イスラエルのみが、条約に加わることを拒否し、核兵器取得に走った。

「なお北朝鮮の場合は、『原子力の平和利用』に関して各国の不可侵の権利を認めた条約上の規定を利用する形で、核兵器の製造を可能にする民生技術を入手し、後にNPTから脱退しています。」とスレイター氏は語った。

NPTは、25年の期限付きで導入されたため、発効から25年目の1995年に再検討・延長会議が開催され、条約の無条件・無期限延長が決定された。

シェンカー氏はIPSの取材に対して、米国が積極的に関与しないかぎり、『中東会議』は招集されないだろう、との見通しを示した。

11月の中間選挙の結果がどうあれ、バラク・オバマ大統領には、自身のノーベル平和賞受賞を正当化し、2009年のプラハ演説で宣言した「核兵器なき世界」というビジョンを前進させるという遺産を築くために、まだ2年という月日が残されることになる。

シェンカー氏は、「中東会議」を2015年のNPT運用検討会議前に開くことができなければ、NPTの運用状況を検討する加盟国の能力が削がれ、条約プロセスや関連の不拡散・軍縮目的が阻害されるかもしれないと潘国連事務総長が警告を発したことは、時宜にかなっていました。」と語った。

またシェンカー氏は、「このプロセスを前進させるために使える主要なツールのひとつに、2002年にベイルートで開催されたアラブ連盟サミット会議で創設され、その後何度も再確認されている『アラブ平和イニシアチブ』(API)があります。」と語った。

APIは、イスラエルがヨルダン川西岸ガザ地区東エルサレムの占領を止め、イスラエル国家と並んでそれらの場所にパレスチナ国家の建設を認めることを条件として、イスラエルを承認し、アラブ世界全体との関係を正常化すると提唱している。

シェンカー氏は、「APIは中東地域に新しい平和と安全の枠組みをもたらす基礎になりうるものです。」と指摘したうえで、「すべての関係者が外交的知恵を絞って2010年NPT運用検討会議で義務づけられた『中東会議』を招集できれば、この新たな平和と安全の地域的枠組みに向けて前進するための一つの要素となり得ます。そして今日中東で新たに芽生えつつある戦略的『連携』は、この会議を招集する基礎になりうるのです。」と語った。

また、イラン核計画に関する交渉が成功すれば、「中東会議」招集に向けたもう一つの建設的な基盤になりうる。

スレイター氏は、IPSの取材に対して、「来たる2015年NPT運用検討会議において何らかの成果がもたらされる見通しは暗く、既に権威を大きく傷つけられ、しばしば蔑ろにされてきたNPTに何が起こるかはっきりしません。また、最近ガザとイスラエル間で起こった悲劇的な出来事が、公約であるはずの『中東会議』への参加に消極的だったイスラエルの態度に変化をもたらすか否かを予測することは困難です。」と指摘したうえで、「このような状況だからこそなおさら、国際社会がかつて化学兵器や生物兵器を禁止してきたように、交渉を通じて核兵器を法的に禁止しようとする有望で新たな取り組みを支援する意義は、これまでよりも一層大きくなっているのです。」と語った。(09.11.2014) IPS Japan