Reporting the underreported threat of nuclear weapens and efforts by those striving for a nuclear free world.

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UN Treaty Paves the Way for a Nuclear-Weapons-Free World

|視点|核兵器禁止条約は非核兵器世界への道を切り開く(セルジオ・ドゥアルテ科学と世界問題に関するパグウォッシュ会議議長、元国連軍縮問題上級代表)

Image: World with nuclear weapons/ World free of nuclear weapons, Michael P., Poland, Art for Peace. Credit: Portside【ニューヨークIDN=セルジオ・ドゥアルテ】

1月22日に発効した核兵器禁止条約(TPNW)について、積極的意味合いをもつ国際法に新たな条約が加わったことの重要性と意義に関して、さまざまな方面から多くのコメントが寄せられている。TPNWは、第15条1項に従って、50カ国目が批准書を寄託してから90日で発効する。これまでのところ、86カ国が署名、52カ国が批准している。

国連のアントニオ・グテーレス事務総長は、この条約を「核兵器のない世界に向けた重要な一歩」と称賛し、「共通の安全保障と集団的安全のために、このビジョンを実現するために協力する」ようすべての国に呼びかけた。世界各地のメディアは、TPNWがすべての核兵器を禁止する初めての条約であることに着目し、核保有国に強い反対論があることを指摘している。

 

核保有国やその同盟国を含む多くの国の市民団体や世論は、 最後まで(禁止されずに)残った大量破壊兵器にあたる核兵器を世界からなくす歴史的な一歩として、条約発効を歓迎した。

ウィリアム・ペリー元米国防長官は、『原子科学者会報』誌に寄せた1月22日付の文章の中で、「禁止条約は、将来の不確定な目標としてではなく、すべての国が積極的に達成に向けて取り組むべき基準として核廃絶を正しく確立した。」と述べ、「アメリカは草分けの国であることに誇りを持っている。私たちは、核兵器のない山の頂上に向けて新たな道を切り開く最初の核保有国となろうではないか。」と力強く締めくくっている。

大量破壊兵器の他の2つのカテゴリーである細菌(生物)兵器と化学兵器を禁止する条約の交渉と採択を成功裏に支持し促進したものと同じ発想が、核兵器の禁止を支えている。核不拡散条約第2条にある核兵器の部分的禁止と、核兵器の保有・非保有に関わらずすべての締約国に適用されるTPNWの全面的禁止との間にはかなりの違いがある。

TPNWは、核実験被害者への支援義務を含む独自の人道的アプローチを採っていることに加え、非核保有国がNPTなどの過去の条約ですでに成した公約を強化し、諸国家間の文明的関係を支える基本的な発想の下では核兵器は受け入れられないという原則を打ち出している。この条約は、核兵器の開発、製造、備蓄に対抗する強力な規範的、道徳的な力となる。

TPNWは、特定の国に向けられたものでも、一方的な軍縮を主唱するものでもない。条約に加盟した核保有国は、条約の第1条・4条に従って行動を取ることになるが、その軍縮プロセスの中で相互の安全を確保するために、核保有国間で協調的取り決めを成すことが排除されているわけではない。

核兵器国は実際、自らの安全を守る共通の方法を探ることをまさに目的とした一時的な取り決めについて、過去に協議したこともあった。敵意と不信に満ちた何十年の間に蓄積されてきた多くの経験は、不安定な軍事的・戦略的優位を際限なく、かつ何の成果もないままに追い続けるよりも、核兵器の廃絶と有機的に結びついた形で漸進的な削減を図っていくことに安全を求める方向にシフトさせることが可能だ。

自らが核兵器を持ちつづけることを正当化するために他国の核兵器保有の陰に隠れることは合理的ではない。文明を消し去ってしまう兵器を保有することは、端的に言って正当化できるものではない。もし正当化できるなら、どの国でも核兵器を取得する正当な理由があることになってしまう。「核兵器が存在しつづける限り、我々は(核兵器を)保有し続ける」というしばしば繰り返される言い回しは、「核兵器なき世界」という自らが口にしている目標を達成する現実的な方法を編み出す常識的なオプションを検討することすらしようとしない利己的な姿勢を表したものだ。

核軍縮は、国際関係における強引な手法や脅しにとって代わることになるだろう。核兵器国は、TPNWに対して鈍い感覚しか持たず怒りに満ちた敵意を向けているよりは、条約に建設的に関与した方が、望ましい結果を得られるだろう。

一部の識者らは、既存の核兵器国を巻き込まない核軍縮条約は効果的でないという事実を強調している。TPNWは、実際に核兵器を保有する国々の誠実な参加なくしては、その目的を完全に達成することができないのは明らかだ。しかしTPNWは、武力衝突から、人類の生存に関わる問題に対処する広範なコンセンサスを生み出す必要性へと、わたしたちの関心をシフトさせるものだ。

核兵器の価値を熱烈に称揚する国々は、潜在的な脅威に対してなされる完全なる破壊(=核兵器)に依存することで自らや地球の安全が保たれるという理屈を、自国民はもとより世界の世論を納得させることに失敗している。核保有国の同盟国も含め、全世界で行われた世論調査を見れば、核兵器を完全廃絶するための、効果的で、法的拘束力があり、検証可能で時限を区切った措置に対して市民からの強い支持があることがわかる。

核兵器国の一部には、核兵器の開発・研究・生産を可能にする国家や機関、既得権団体に対してTPNWの発効が与えるプレッシャーは、世論が政府やその他の主体の行動に影響を及ぼす民主主義が確立された国でのみ効力を発揮するという意見がある。しかし、これは事実の半面でしかない。あらゆる社会において、人びとは自らの望みを行動に変換する方法を見出してきたのだ。

世界の歴史が明確に示しているように、人びとの意見や態度、信条が、専制的で抑圧的な体制が打ち立てた壁を突き破ってきた。国際法は、政治体制に関わりなくあまねく適用される。対内的なプレッシャーは市民社会からのみ起こるのではなく、他国の発表や個人の行動、国際組織、有名人のとる立場、民衆の良心の一般的な強さからも起こるものだ。無意味な軍拡競争と、進展のなさに対する不満が募る中、核軍縮の効果的な措置を求める世論はますます強くなるだろう。

発効51年を迎える核不拡散条約(NPT)のすべての加盟国は、核軍縮の方向に向かって効果的な措置を早期に達成するとの意図を明らかにした前文と、とりわけ、「核軍拡競争の早期の停止と核軍縮に関連した効果的な措置に関する交渉を誠実に追求する」とした第6条を履行する義務を負っている。

核兵器禁止条約を交渉し採択した122カ国は、まさにそれを実行することで範を示したのである。これらの国々の努力は称賛されるべきであり、否定したりするのではなく追随されるべきものだ。そうすることによって、核兵器の完全廃絶は最終的に達成される。

「核軍縮・核不拡散体制の要石」とされるNPTの加盟国は、核軍縮義務のこれ以上の軽視を認めてはならない。来るNPT再検討会議の機会を利用して、核兵器の脅威を世界から除去しようという重要かつ緊急の任務に対するTPNWの貴重な貢献を認識し、その点に関する効果的な行動に合意しなくてはならない。発効したTPNWは今や、この取り組みの不可欠の一部になったのである。(01.28.2021) INPS Japan/ IDN-InDepth News