UN Nuclear Ban Treaty and the Vital Role of Nuclear Have-Nots

核兵器禁止条約と核を「持たざる国」の重要な役割(ジャルガルサイハン・エンクサイハン元モンゴル国連大使)

ジャルガルサイハン・エンクサイハン博士は、核不拡散・軍縮促進のために活動するNGO「ブルーバナー(青旗)」事務局長で、モンゴルの元国連大使。この寄稿文はウランバートルで8月31日から9月1日にかけてブルーバナーによって開催される「核軍縮問題に関する国際会議:グローバル及び地域の側面」に先駆けて寄せられたものである。会議では、「核なき世界」を実現するという共通の目標に向けて共に前進していくための効果的な諸戦略が模索される予定だ。

【ウランバートルIDN=ジャルガルサイハン・エンクサイハン】

Dr. Jargalsaikhan Enkhsaikhan, Chairman of 'Blue Banner'.国連で真に歴史的な重要性を持つ出来事が起きた。7月7日、核兵器を法的に禁止する条約の制定を目指す交渉会議の最終会期において、核兵器禁止条約が採択されたのである。これは、冷戦終結以後に交渉された核軍縮関連のものとしては、初めて法的拘束力を持たせた文書である。

賛成122・反対1(オランダ)・棄権1(シンガポール)で採択されたこの条約は、国連総会が「原子兵器と、大量破壊に適用しうるその他すべての主要な兵器を各国の兵器庫から一掃する」提案を行った第1号決議を1946年に採択して以来の、核兵器廃絶を目指す多国間の取り組みにおいて大きな一里塚となった。

世界の原子兵器の95%近くを保有する米国とロシアという2大核兵器国は、大量破壊兵器の備蓄を減らしてはいるものの、核兵器の違法化という問題は、両国の核政策の中に含まれてこなかった。それどころか、核兵器国の数は9カ国に増え、核の近代化が進行し、新たな核軍拡競争が起こりつつある。

核兵器国の一部の指導者の発言をみると、彼らが追求している政策は必ずしも「合理的、あるいは正気の」道ではないかもしれず、「核兵器は誰の手にも属さない」ということを認めている。こうした大量破壊兵器の恐怖から身を守る最も信頼のおける方法は、これらを全廃することだ。

したがって、脅しをかけるようなレトリックが急増するなか、核兵器のリスクに対する懸念が強まってきている。近年、ノルウェー、メキシコ、オーストリアで3回にわたって開かれた国際会議では、意図的なものであれ、あるいは事故や瑕疵によるものであれ、核兵器の爆発が人間に及ぼす壊滅的な影響に焦点が当てられた。

他方で、核不拡散条約(NPT)での約束や、2000年NPT運用検討会議での合意(13項目の実践的措置)、あるいは2010年NPT運用検討会議の64項目行動計画を果たしていないとして、核兵器国に対する不満が高まっている。これらすべてのことが、国際社会の圧倒的多数をして、核兵器の全廃を最終目的とする、その禁止に関する協議を始めさせることになったのだ。

そうした協議を呼びかけるうえで重要な役割を果たしたのは、オーストリア、ブラジル、アイルランド、メキシコ、ナイジェリア、南アフリカ共和国といった非核兵器国であった。しかし、国連総会が国際協議の開始を決定し、条約文言を採択するうえでは、他の非核兵器国からの支援が、重要な役割を果たした。

各国及び国際的な市民社会組織、とりわけ、核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)は、交渉開始に向けて具体的な措置を採る必要性について大衆の意識を高め、関連情報を幅広く拡散するうえで重要な役割を果たした。

また、交渉会議の議長を務めたコスタリカのエレイン・ホワイト・ゴメス大使と、同会議を主導した人々は、条約の内容合意に向けて、粘り強い忍耐力と柔軟性を発揮した点を高く賞賛されるべきだ。

核兵器条約は妥協の産物であった。その意味では、協議に参加したどの国をも満足させるものではない。条約が近い将来に核軍縮をもたらすことはないが、条約の採択は、核兵器を禁止するプロセスを開始する集団的なアクションが具体的に開始されたことを意味する。

これは、非核兵器国が自らの死活的利益に直接影響を及ぼすプロセスにより関与する空間を切り開く新たなステージの始まりを意味する。核軍縮の国際規範を強化し、核兵器国のみならず全ての国々の利益に影響を及ぼす問題が持つ社会的な立ち位置を強化し、他の大量破壊兵器や一部の通常兵器の場合と同じく、そうした兵器を非正当化することになるだろう。

法的な観点では、この条約は、国連憲章に反映された国連の原則や目的にかなうものだと言えよう。また、190カ国以上が「核軍備競争の早期の停止及び核軍備の縮小に関する効果的な措置につき……誠実に交渉を行うこと」を約束したNPT第6条にもかなう。

ひとたび発効した条約の履行は、核兵器国とその同盟国が参加していないだけに、困難なものとなるだろう。しかし、核兵器禁止条約の発効は新しい状況と環境を生み出し、未参加国家に悪の烙印を押して、生起しつつある政治的・法的環境を最終的に認識せざるを得なくなる。

その意味で、核兵器禁止条約が、のちの加盟に道を開いていることは称賛に値する。非核兵器国が条約加盟国を増やしていくのには、時間がかかり、忍耐のいる大きな努力となることだろう。NPTですら、署名、批准あるいは加入に開放された際には、それほど大きな支持を集めていたわけではなかった。しかし、今日では191カ国が締約している。

一つの妥協として、禁止条約は全会一致の文書とはならなかった。特定の問題についてより強力な条項を望んだ国もあれば、未参加国に受け入れやすくなるよう期待して条項をより曖昧にすることを望んだ国もあった。

モンゴルの観点から言えば、条約第1項(g)と核兵器使用の「威嚇」への言及が、重要な条項だ。というのも、後者は、「核抑止」や「拡大核抑止」概念への直接的な挑戦となっているからだ。一方で、核兵器の定義が欠如している点や、非核兵器国の領土からの核兵器を撤去する時限設定が欠如している点は、核兵器禁止条約をいくぶん弱いものにしている。

上で述べたように、この条約の協議を開始し実際に草案をまとめる上で、非核兵器国が果たした役割には大きいものがあった。しかし、近い将来に条約に署名・批准してこの勢いを維持し、条約を発効させる上での役割は、より重要なものになろう。しかし、核兵器国やその同盟国の立場を考えるとそれは容易なものではない。また、そうした国々は、非核兵器国の政策に影響を及ぼそうとするだろうし、核兵器禁止条約の発効につながるいかなるステップも阻止しようとする可能性さえある。

同様に、国別・国際の両レベルにおける市民社会の役割もまた、きわめて有益なものとなろう。第4条4項の履行は、核兵器の地理的拡散を狭め、締約国会議はその適用・履行を強化することになろう。条約履行の検証、条項の解釈、紛争を解決する上での非核兵器国の役割もまた、重要なものになる。

いかなる積極的な行動も、国レベルの政策から始まる必要がある。この点で、条約第5条にあるように、条約の国内履行は、それぞれの加盟国の特殊事情を反映しつつ、条項を強化することになるだろう。従って、条約の国内における法制化は意義を持つものになる。これはまた、条約の効果を確かなものにするためにも、情報や経験の交換が有益な領域である。

核の傘の下にあったり核兵器国の配備を認めていたりするような、他の非核兵器国のグループも、独自の役割を果たしうる。核兵器国の同盟国として、これらの国々は核兵器国に直接意見を言う機会がある。核兵器国の政策を支持したり、核戦争計画に参加したりするのではなく、今日の緊密に相互依存化した世界での軍事ドクトリンにおける核兵器の役割を見直す働きができるだろう。これは、禁止条約に加入するまでの間、NPT第6条を履行し、「核兵器なき世界」の目標を促進することへの貢献となるだろう。(7.28.2017) INPS Japan/ IDN-InDepth News 

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